バントという指標(5)

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 今回は事例の紹介です。
 2015年のプロ野球のデータを取り上げます。できるだけ公式記録集などに載らないような記録に着目していきます。

 今回はバントについて紹介します。
 バントと言えば、送りバント(犠打、犠牲バント)をイメージされると思います。送りバントの数値(送りバントが成功した数)は個人ごとに記録されます。一方、送りバントが失敗した数というのは記録に残りません。成功した数だけなく、失敗した数と併記することで上手い選手や下手な選手がわかるかもしれません。

 下表はバント企図数のランキングです。バント安打、送りバント成功、バント失敗の合計が20個以上(16人)を掲載しました。数値は「エキサイトベースボール」を参考にしました。手計算による集計のため、正確性の保証はできないことをご了承ください。

 送りバント成功の数が最も多かったのは、菊池涼介(広島)の49個でした。ほとんどが2番打者として起用でしたので、無死1塁の場面で送ったのは38個ありました。

 バント安打の数が最も多かったのは、中島卓也(日本ハム)の7個でした。
 このバント安打というのは送りバントにはカウントされません。多くのサイトでは内野安打と区別せずに「投安」や「三安」のように記載されていますが、「エキサイトベースボール」では「投バ安」や「三バ安」のように記載されています。バント安打には以下の2種類があります。
 (1)「無走者」や「2死」の場面でセーフティバントが成功した
 (2)送りバントのつもりが内野安打になった

 (1)については、塁上に送るべき走者がいませんので、足の速さだけでなく転がす技術と守備陣の隙を見逃さない眼が要求されます。毎回毎回、狙ってできるものではありませんが、こういう打者がいると攻撃の幅が広くなると言えるでしょう。
 (2)というのは、例えば、無死1塁から送るつもりでバントをしたのに、絶妙な場所に転がって内野安打になり無死1,2塁でチャンスが拡大したということです。1死2塁と無死1,2塁では大きな違いがありますので、得点できる可能性が高まったと言えます。この場合、走者を無事に進塁させたのですから、犠打にカウントしても良いと思うのですが、残念ながらそうなっていません。打者自身が犠牲(アウト)になっていないですから仕方がないのかもしませんが、かつてのセーブポイント(セーブ+救援勝利)のように、犠打ポイント(犠打成功+バント安打)のような指標があればバントの上手い選手がもっと評価されるかもしれません。

 バント失敗の数が最も多かったのは、炭谷銀仁朗(西武)石川雄洋(DeNA)能見篤史(阪神)の10個でした。失敗の内訳は後述します。
 多くのサイトでは内野手への凡打と区別せずに「投ゴ」や「三飛」のように記載されていますが、「エキサイトベースボール」では「投バゴ」や「三バ飛」や「バ三振」のように記載されています。バント安打と同様に、バント失敗にも以下の2種類があります。
 (1)「無走者」や「2死」の場面のセーフティバントが失敗した
 (2)バントを試みたのに走者を進められなかった

 (1)については、野手の正面に転がって楽々アウトになると見ている方もガックリ来ますが、足の速い選手にしかチャンレンジできない作戦ですので、ある程度の失敗はやむを得ないのかもしれません。
 (2)というのは、三振(空振りやファール)したり、ゴロやフライで走者が封殺されたり、併殺になったりしてチャンスが縮小したということです。無死1塁から1死1塁になると、アウトが増えて走者はそのままです。最悪なのは無死1塁から2死無走者になった場合で、併殺で一度に2死を取られると、無得点の可能性が高まったと言えます。

 これらの合計を分母にして、分子をバント安打と送りバントにしたもので成功率を出しました。16人の中で最も成功率が高かったのは片岡治大(巨人)の92.3%でした。打者全員の平均は76.4%でした。
 最も成功率が低かったのは石川雄洋(DeNA)の52.4%で、昨年に続いての最下位でした。10個のうち、3個が犠打失敗(そのうちバント併殺打が1個)、7個がセーフティ失敗となっており、16人の中で唯一60%を下回っています。
 炭谷銀仁朗も同じ10個ですが、9個が犠打失敗(そのうちスリーバント失敗が1個)、1個がセーフティ失敗でした。能見篤史はバント企図の合計が15でしたのでランキングの対象外ですが、成功率は33.3%と圧倒的な低さです。10個のうち、9個が犠打失敗(そのうちスリーバント失敗が3個、バント併殺打が3個)、1個がセーフティ失敗でした。送れないどころか併殺打もあり、チャンスを作ることができませんでした。

 おまけの情報として、各打者の打率、出塁率、長打率、OPSを併記しました。
 送りバント(犠打、犠牲バント)というのは、打撃が劣る選手がやることが多いです。16人のうち、打率.250以下の選手が9人、長打率.350以下の選手が12人ですので、確実性(打率)よりも長打力の(期待が)低い選手が多いようです。
 ちなみに、2015年の平均打率は.252、平均長打率は.368でした。

 今回、バント作戦の成功率を求めましたが、打撃成績から拾い出せないケースが3つ存在します。
 1つ目は送りバントをするつもりで構えていたのに、四球または死球になった場合です。投手がバントを警戒して微妙にコースをついた結果、ストライクゾーンにボールが入らなかったケースを見たことがあると思います。あるいは投球が内角へ行ってしまい、打者の頭部付近や腕や腹部に当たってしまったケースです。
 このような場合、打撃成績には「四球」または「死球」と記載されます。「バ四球」や「バ死球」と記載してくれると記録マニアとしては嬉しいのですが、そういうサイトは無いようです。バントしようとした結果、四死球を得た(出塁してチャンスを広げた)のですからバント作戦は成功とみなすべきですが、打撃成績から判断できないのは残念です。
 2つ目は打撃が完了する前にスクイズを失敗した場合です。例えば、無死または1死で3塁に走者がいる場面で、初球にスクイズを試みるも、バッテリーに外されて、3塁走者がアウトになるケースを見たことがあると思います。この時点では、アウトが1つ増えますが、打者はアウトになっておらず、カウントは0ボール・1ストライクです。この後、打者がヒットを打てば「安打」、アウトになれば「凡打」が記録されます。つまり、初球のスクイズ失敗は打撃成績として記録に残りません。
 3つ目は守備妨害でアウトになった場合です。バントした(またはバントしようとした)打者と捕手が交錯したり、バントの構えから打者が見送った後、捕手が走者を刺そうとして打者が送球の邪魔になったりしたケースを見たことがあると思います。
 このような場合、打撃成績には「守備妨害」と記載されます。「バ守備妨害」と記載してくれると記録マニアとしては嬉しいのですが、そういうサイトは無いようです。単に「守備妨害」だと、バント企図時なのかバント企図時以外なのかが判断できません。バント企図時であれば、バントしようとした結果、アウトになったのですからバント作戦は失敗とみなすべきですが、打撃成績から判断できないのは残念です。

 このような問題がありますので、今回の表だけでバント作戦の成功率を論じるのは不充分なわけです。正確に成功率を求めるのであれば、試合の映像を見ながらチェックしていくことが必要になります。

 次回は投手から見たバント作戦の成功率を見ていきます。

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